生米プロジェクト

会社退職→結婚→夫は日本に置いてヨーロッパに8ヶ月→夫と東京生活→2人でイギリスに引越し

Embercombeで考える、ビジネスとコミュニティとポリシーと

これまでもいくつか書きましたが、Embercombeには様々な個人・団体が訪れ、そう言った人々との交流がここにいる魅力でもあります。先週はサステナビリティ系の民間企業が会社の研修のようなものでEmbercombeを利用していました。ヨーロッパ・アメリカ・南米と各地に散らばるオフィスのメンバーが集まるイベントで、メンバーの親睦を深め、企業方針を浸透させる目的だそうです。私はたまたまこの企業(A社とします。)のホストという役割をすることになり、彼らの滞在をサポートすることになっていました。

世の中によりよく持続可能な変革をもたらすため、様々な業界の大小様々な企業に対しクリエイティブなコンサルタントをしている会社ということで、何となく面白そうな会社だなと楽しみにしていました。私も前職時代に何度かA社のような社内グローバルミーティングに参加したことがありますが、毎度いろいろな議論あり、発見があり、そしてただただ夜が更けるまで飲み踊る…というものでした。一般企業でこうなので、A社がEmbercombeとコラボしたらどうなるのかとワクワクしていました。

 

ところが蓋を開けてみれば、A社ほどがっかりした気分になったことはないくらい、残念な印象を多くのEmbercombeの人に残すものとなってしまったのです。

 

物議を醸すこととなったA社の滞在

A社の3泊4日の滞在の最終日、土曜日の朝。タクシーを見送った私はなんとも寂しい気持ちに包まれていました。きっと彼らはEmbercombe滞在を楽しみ、モチベーションに溢れ、世の中にプラスの影響を与えるような(少なくともそういう自意識でいる)人々なはず。しかしなぜこんなにも今私は後味の悪い思いでいるのだろうと、眠気の残る頭で考え始めました。

Embercombeの1日は、朝から始まり13時に昼食、キッチン担当でなければ17時には業務が終わり、18時半に夕食となっています。その後清掃担当がキッチンの掃除をして、遅くとも皆21時には仕事が終わります。ところが初日はA社の19時過ぎの到着に対し、窯焼きのピザを提供することになり、一人一人の注文を取っていると、すべて終わってみれば23時となっていました。

その後も13時の昼食の時間になってもミーティングが長引いて30分ほどの遅刻があったり、夜もマッチで暖炉に火をつけられないと言って終業後のボランティアらに不遜な態度で助けを求め、ブン取られるようにライターを貸してみたら返ってこない。夜中は飲み会となり、ゲルの周りで遅くまで騒いでいる…

最終日こそEmbercombeのスタッフもA社の人とケーリー(スコットランドの民俗ダンス)に招待され、その後もクラブ状態で踊っていましたが、最後まで「一緒に楽しむ」というものではありませんでした。タクシーにもさっさと乗り込み、同僚にのみ別れを告げていました。そして残ったのは至るところゴミの山。食べられることなく捨てられてしまった、肉を始めとする食べ物の数々でした。

 

この不快感は何なのか

今回A社の滞在は企業研修の一環ということで、ほとんどEmbercombeとの接点なく去ってしまった彼ら。この場所の意味や意義も、Embercombeが自然や動物をどう考えているかも知ることなく。

そういう彼らにとってEmbercombeは自然に囲まれた、ちょっとキレイでイケてる場所でしかなく、私たちのようなスタッフも、ここを形作るものではなくホテル会場などの従業員と映ったことでしょう。しかし考えてみればこれは多分全く普通の反応で、私もホテルで会議をしたりお店で飲食している時は、同僚以外はあまり頭になかったと思うし、ホテルや飲食店の従業員と同僚と混じってダンスなんてしない、普通。「17時で仕事終わりだから話してくれるなよ」なんてオーラを出されたら、サービス悪いな、と思うと思います。ゲル、電気もないし。

なぜ私は悲しい気持ちになっているのか。A社の人間は、けしからん集団なのか。しばらく考えていると、Embercombeという特殊な環境にいて、特殊な状況が当たり前となっていた自分に気づきました。

 

持続可能なコミュニティとして、Embercombeはどこへ向かうのか

A社の滞在について思うところあったのは私だけではなかったようで、彼らが去ってからミーティングが開かれ、私も参加しました。そこで今後はEmbercombeを選んだ人々にも最大限その価値を還元し、今後の気づきを得てもらうためにも、ただの場所貸しではなく我々のメッセージを伝える時間をいかなる団体とも持つようにしよう、となりました。(あとは、民間企業にお金を払って来てもらうなら、9/17時の就業感覚ではきっと甘いので、夜間シフト担当をつけたり、事前準備ももっと必要、とも。。)なぜゲルなのかなぜ電気がないのか、そういう話をしないならここでなくてもいいはずです。 

Embercombeは、あまりお金に余裕がある団体とは言えません。財政的にももっとサステナブルにするため、今変革の時にあるところです。今後はA社のような民間企業の滞在をより多く受け入れていきたいと考えているようです。しかしEmbercombeがEmbercombeとしての意義を全うし、かつコミュニティと共存しながらビジネスを回していくには、もっともっと考えていかなければならないところがあります。そこにポリシーがなければ、Embercombeがそのミッションを成し遂げられることができなくなります。

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Embercombeでの私の業務内容は、決して華やかなものではなく、掃除や修理、汚れ仕事のようなものが多くあります。しかしそれに対して私が喜びや満足感を感じていたのは、私がそこから得ていた一緒にいる人々からのポジティブな反応や幸せな時間の流れによるものだったのだと、改めて気づきました。この場所の価値をまた一つ感じるとともに、自分の周囲の労働に従事している人をどのような気分にさせるかも、また私の振る舞い次第なのだということにも、身につまされるような思いです。

 

 “Embercombe’s mission is to be a powerful and innovative catalyst for the emergence of leaders and change agents who will take courageous action for a just, peaceful and sustainable world.”

embercombe.org

Embercombeでの仕事 - 夢を見るしごと -

Embercombeでの仕事は、キッチンでの調理・農作業・掃除といった、コミュニティが生活を回していく上で必要な仕事がありますが、中でもユニークなのが「Dreamer」という仕事です。

これは「Being(ありのままであること)」そしてできれば「自然とのつながりを感じる」という時間で、毎日1人が半日この仕事の担当になります。何をするかは全くの自由で、その結果を翌日の朝の会でみんなに共有することになります。日常から距離を置いて、「何もしないでいい、何をしてもいい」という時間を最大限意識的に使う時間です。詩を書く人もいれば、絵を描いたり、単に感じたことをつらつら述べるだけの人、何かすごいことをしようと思ったけれど、結局何も浮かんでこなかったという人もいます。

私はこれまで2回このDreamerの仕事をさせてもらいましたが、1回目はEmercombeに来たばかりの頃でストレスも溜まっていたのか、どんよりした曇り空が私の心も暗〜くしてしまい、とんでもなくマイナス思考しか浮かんできませんでした。しかしそれをそのままメンバーに共有したところ、正直でよかった、という反応が得られました。

今週の2回目は、私も随分慣れてきたのか、とても落ち着いて過ごすことができました。シェアしたところ結構ウケたので、せっかくなのでここにも書いておきます。

Dreamerとしての午後の時間、「結局Beingってなんなん?自然とのつながりってどういうこと?どうなる?」を真剣に考えようと、最適な場所としてEmbercombeにあるとても見晴らしの良いコンポストトイレで、2時間座って考えました。日本語で全て書くのはとてもお恥ずかしいので、概要だけ書きます。いや気になるという知的好奇心旺盛な方は、メモ程度ですが英語版も見てみてください。

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コンポストトイレでBeingについて考える、自然とのつながりを感じる

●なぜコンポストトイレなのか

(※コンポストトイレ:排泄物を栄養分として循環させるシンプル&エコトイレ)

  • 'Being'及び'自然とのつながり'について熟慮した
  • 見晴らしが良く、動物を観察でき、自然にむき出しの環境
  • マズロー欲求段階の三角形の最下辺にあるような人間の欲求、特に3大欲求のような原始的欲求が、コンポストトイレで過ごすことで最も満たされやすいと考えた。(EmbercombeでのDreamerとしての就業時間内では)
  1. 睡眠:検討の余地はあるが、今回の観察という目的には相応しくないかも
  2. 食欲:観察可能
  3. 排泄:一部可能

●一般的な発見:3大欲求に限らない、観察中における発見

●食欲:体の反応、ものを食べることについて

●排泄:排泄の結果、自分の感じ方

●終わりに:人間、考える葦。コンポストトイレ、自然界に我々を導く扉

いや詳細も気になる、という知的好奇心旺盛な方は、メモ程度ですが英語版も見てみてください。
  

これは特に、結論!というものではなく、私が就業時間内に上記のテーマに対して感じたこと、考えたことです。こちらに来て、アートではないのですが、答えのないもの・途中で終わるもの・感じ方や考え方を委ねられているものに接することが多くあります。最初はとても気持ちが悪かったのですが、そういうものを愛することもまたおもしろく、意味があることだと思うようになりました。 

私が何かすることになったら、自分の職場にも、Dreamerという仕事を取り入れてみたいです。

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Being in the compost toilet: Feeling connections with nature

  • Why compost toilet?
    • Think about ‘being’ and ‘connections with nature’
    • Human’s 3 primitive desires defined by Maslow's triangle, can be satisfied by staying in the compost toilet
      • Sleep: Could be good, but may not be suitable for this observation
      • Appetite: Observable
      • Excretion: Wee - probably, poo - if possible, intercourse - no partner

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  1. Findings in general
  • Unnatural Sounds: Cars, airplanes, helicopters, pounding metals with hammers, chain saw
    • Uncomfortable. Why? Probably because they are unnatural sounds?
    • However, they are originally made from natural resources from the earth, then what differentiates ‘natural’ and ‘unnatural?’ - chemical bonding?
  • Approach of creatures:
    • Human: Felt alarmed and interested by footsteps and voices. Wonder if they are friends or foe.
    • Fly: I ignored. Feel of repulsion.
    • If cat?: Cute. If Reptile?: Weird - Difference: Familiar or not/Mammal or not
  • Temperature: Cold. I put my jumper on because there is a jumper. But if not, like an animal, what would I do? Adjust my body temperature or make myself hairy. In reality, we won’t be like that anymore. Evolution or devolution?
  • Being the same posture: Tired. Changes are important. For body, and the same as life

    2. Appetite

  • Had bread with sugar and raisons: Sugar makes me happy. I get thirsty.
  • Vegetarian: If we could hear the voice of vegetables, would we avoid eating them?
  • Being thirsty: My mouth got sticky, I take some tea, movement of my mouth got smooth.

  3. Excretion

    • Wee - Releasing unnecessary materials for my body. Feel happy and safe.
    • Fart - Stinky, but the smell was ceased by the wind and time. Smell is, good or bad, just  a chemical bonding.

     4. Conclusive words

  • Having a pen, I think, I imagine, this is showing that I am a human being, we are the thinking reed. Compost toilet - gateway to the natural field.

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恐怖体験!Breath Work

Embercombeにはカウンセラー、コーチという人がいて、健全なEmbercombe生活を送れているかのチェックのため、全スタッフとボランティアは月1回面談することになっています。Embercombe外のスタッフに、中の人には言えないことがあれば相談しなさいよ、という目的です。

かつ、ボランティアはボランティアコーディネーターという役職のボランティアと、これまた月1回面談し、活動上の支障がないか話し合う機会があります。

かなりこまめに心身ともに健康か、かつEmbercombeでの生活に満足しているか確認してもらえる、これはなかなか手厚いことだと思います。

 

さて先週金曜は、そんなカウンセラーのティナによって開催された「Breath Work」というイベントがありました。Embercombeにはこういう風に、各人がそれぞれのバックグラウンドを生かし、毎日のように業務外でいろんなイベントがあります。

事前に、呼吸を意識して、よりリラックスして、より自分を解放するようなもの、という説明を受けました。枕と布団を持ってきてね!と言われたので、さぞ深呼吸を通し快適な時間を過ごすんだろうと思ったら!!!

 

大間違い!!

 

 

 

目を閉じ、横になる。

 

 

ティナ「お腹で息を思い切り吸って、吐いて…途中で何か問題があったら静かに手を挙げてください」

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ああああああああああああアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 

「ウォッフォフォフォフォォォオーーーーーウォッフォフォウォッフォフォォォオーーーーー

 

 

 

 

な、なんやこれは!

 

私の横にいた二人は叫び笑い始めました。

 

なぜこんなに彼らがトチ狂ったように叫ぶのかわからない私。う、うるさい、そして気持ち悪いし呼吸に集中できないっ!!

 

出て行く人も。。でもここにいたい気もする!!!!でもダメだ横の二人!こんなヤツらに挟まれて最悪だ!!

 

私は手を挙げました。

 

私「すみません、音楽を聴いてもいいですか!」

助手「いいえ、できるだけ呼吸に集中して」

私「無理です!だってあいつらうざすぎる!!!」

 

というわけで、普段は控えめな私も主張しまくり、必死の思いで音楽を聴く許可を得ました。

 

な、何聞こう、、、でも呼吸法の時間ならポップスとかロックは違うよな、、、しかも長時間携帯を触らずに済むといえば、、やっぱりここはこう、クラッシックか!!ラフマニノフとかにしとくか!!

 

普段はクラッシックとはあまり縁がなく、聴き始めても長い協奏曲などには飽きてしまい、集中が途絶える私。きちんと全部聞いたことがありませんでした。

 

叫び声から逃れられるならと、とりあえずイヤホンを耳につけた私。目を瞑り、ダイナミックな演奏が流れ、よし、集中できるぞ、と思っていましたが、しばらくするとどんどん大きく、そこかしこから叫び声が聞こえるようになり。。こ、こわい、、

いや、でもダメだ、でもダメだ、こんなことでどうする!集中しろ私!集中だ!集中!!!音量を上げ、なるべく曲に集中していると、目を閉じればそこはラフマニノフの世界、曲調の変化にストーリーを感じるように。叫び声と相まって、宇宙の中にいるように感じました。。

 

しばらくすると、終わりが来ました。長かった、、疲れた。

 

ふと見渡してみれば、泣いている人、うずくまる人も。みんなで感想を言い合っていましたが、手足が硬直するように痺れた人も何人かいました。

 

なんだったんだ、、と思いましたが、どうやら叫び声については途中で「できればリラックスして、声を出してみて」というアナウンスがあったようです。そうとも知らず私はクラッシックに浸り恐怖に怯えていたのですが…

 

以前にも参加した人曰く、自分も最初は驚いたし、変な気分になった、とのことでした。毎回感じ方が違うのだそうです。

 

これって呼吸関係あるのか…?と言いたくなりますが、感じ方はおそらく他の人と違いましたが、私の今回の発見としては、クラッシックの聴き方、楽しみ方に少し触れられたかなということでした。すごくすごく強かったのですが、これはこれでよしとします。。

シューマッハカレッジのプログラム

前回の記事ではシュタイナー学校についての記事を書きましたが、先週1週間はEmbercombeと関わりの深いもう一つの代表的な機関、シューマッハカレッジの学生がBecoming Indigenousというプログラムの一環でEmbercombeを訪れていました。

www.schumachercollege.org.uk

サンダンス:自然復活と和平祈願の儀式

Embercombeの創設者、Mac Macartneyは20年ほどネイティブアメリカンの師事を仰いでいるほど強い関心を持っているのですが、今回はネイティブアメリカンラコタ族の講師がやってきて、サンダンス(Sundance)という儀式をEmbercombeで行うというものでした。この講師の親子、ロレッタとリンダは1870年代に白人たちと彼らの土地を巡る争い、ブラックヒルズ戦争で戦ったラコタ族の有名な戦士を祖先に持ち、現在世界中でその文化や歴史について普及活動をしています。(ところでこの戦争、とてもアホらしい)

私は基本的にはプログラムに参加していたわけではなく、普通に働いていたので全貌を見たわけではないのですが、彼らの5日間のEmbercombe滞在は、昼間はラコタ族やネイティブアメリカン、サンダンスといった儀式についての講義を受け、真夜中にスウェット・ロッジという蒸し風呂のようなもので体を清める、ということをしていたようです。

 

そして最終日の金曜日、Embercombeのメンバーもメインの儀式、サンダンスに招待され、私もちょっと覗いてみようと思って行ってきました。

 

場所は、Embercombeにあるストーンサークル。これはEmbercombeの創設間もない頃に関わっていたネイティブアメリカンによって要求されて作ったものだそうです。Embercombeの中で神聖な場所とされていて、私たちも1週間の研修の最後の日にここを訪れ、Embercombeの中で見つけた自然のものを火にくべながら自分たちの決意を口にしました。(その後感極まり、今夜は寝袋を持って来て、みんなでここで寝よう!と寝ていたら、大雨に降られ真夜中に退散、なんてこともあったけど)

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今回のサンダンスは、ロレッタの友人であるイギリス人の友人が癌にかかり、その回復を祈念する、というものでした。火を囲み、真ん中にネイティブアメリカンの親子、癌の男性、Embercombeのマック、今回プログラムのEmbercombe側コーディネーターを務めたネイティブアメリカン文化に心酔している同期ボランティアのジョスが祈りを捧げ、その周りを私たちが囲みました。本来のサンダンスのようにピアッシングとして体を痛めつけるということはありませんでしたが、プログラムの受講者らは皆顔にフェイスペインティングを施していました。

儀式そのものは、ラコタ族の言葉で何かを唱え、何度も火にくべた薪の煙を使いながら男性への祈りを捧げるという、非常に静かなものでした。私たちにも、リンダがその煙を振りかけていました。

 

ネイティブアメリカンカルチャーをありがたがる西洋人

Embercombeには、その様々な魅力に対し、様々な目的を持って来ている人がいますが、ちなみに私はスピリチュアルなものに特別興味があるわけではありません。なので、ネイティブアメリカンの超自然的なパワーというのにも、「ふーん...(-_-)」というくらいでした。むしろ、ちょっとそういうのを崇める集団に気持ち悪さを感じていたくらいです。(日本にも、「スピリチュアル」だとか「オーラ」について書いてあるHPやパステルカラーなブログ、ありますよね。)

 

この儀式を通して感じたのは、ネイティブアメリカンの文化に対する尊敬でしたが、一方で全くの白人であるマックとジョスがわかったように祈りを捧げることには失礼ながら違和感と少しの滑稽さを覚えました。

以前にもスイス人の知り合いが、ネイティブアメリカンカルチャーを取り入れた研修?に心酔している話をしていて、怪しいな〜〜と思ったことがありました。私にはどうしてそこまで彼ら西洋人がネイティブアメリカンに惹かれるのかよくわからなかったので聞いてみたところ、あるEmbercombeの人曰く「イギリスの、そして多くのヨーロッパ文化はローマ帝国支配によって全て破壊され、本来存在していた土着の自然と人間との関わりや文化が失われてしまった。そのことから、自分たちには喪失感というものがどこかにあり、そのためによりネイティブアメリカンカルチャーのようなものに自分たちが探しているものを感じるのだろう」ということでした。

しかし結局ネイティブアメリカンカルチャーは西欧人のものではなく、彼らが完璧に理解できるものでもなく、そして彼らがそこに自らの拠り所を探しても見つからないもので、しかもそれはもうどこにもなく、ある種の哀れさも感じました。一緒に見ていた友人は「かつて征服した我々とネイティブアメリカンが抱き合う姿に感じるものがあった」と言っていましたが、自分にはない感覚です。

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そして意外にもこの一連の儀式や彼らとの滞在で感じたのは、もっと日本の文化を勉強しないとな、大事にしないとな、ということでした。

 

リンダは3月に彼女の母を亡くし、長かった髪を切ったと言っていました。

先日みんなでもののけ姫を見たことがあったのですが、アシタカが祖国から旅立つとき、黙って髪を切るシーンがあり、皆になぜ髪を切ったのだと聞かれました。こだまが出てきたときには、みんなにとってはかわいいもの、おもしろいものにしか見えなかったようで、クスクス笑っているばかりでした。森の中にいる存在として、彼らにはリアリティを持って感じることができなかったのでしょう。

彼らは食事のとき、「Spirit(魂)にあげるので小さなお皿に食事を分けてください」と言っていました。欧米人は感銘を受けていましたが、待てよ、うちのばあちゃんちにも神棚があってご飯普通に置いてたじゃないかあ、とふと思い出したり。

神棚なんて、私の記憶から遠く消え去りそうになっていましたが、改めて自分たちにもきちんと理解しておかないとな、残しておかないといけないことがあるなと思った次第です。

そういうことか、ネイティブアメリカンよ。

シュタイナー学校の生徒たちと過ごした2週間

先週から、ロンドン郊外にあるKings Langley Schoolというシュタイナー学校の14〜15歳の生徒34人がEmbercombeを訪れていました。生徒層はというと、シュタイナー学校の学費(ものすごく高くはないが)を払う余裕のある家庭の子でありつつも、障害を持っていたり、ドイツやイタリアのシュタイナー学校からの留学生もいました。

シュタイナー教育 - Wikipediaについては私も大学の頃に調べたことがあったのですが、子どもの成長に合わせた学習体系をとり、絵画や音楽といった芸術を重視していたり、8年間の担任持ち上がり制があるなど、なかなかユニークな教育です。感性を育む上ではいいんじゃないかと思うのですが、ドイツの普通教育を受けた友人と話していたときには、「ああ、あのちょっと変な学校ね」と言っていたので、ノーマルであるとは言いがたいのでしょう。

info.e-waldorf.com

しばらくシュタイナー教育のことは頭から消えていたのですが、Embercombeはそんなシュタイナー学校と深い関わりがあり、子ども向け教育プログラムでEmbercombeを訪れる多くの学校はシュタイナー学校だということでした。

そして今回はEmbercombe史上初の、11日間という長期間にわたる子どもたちの教育プログラムでした。私が14、5歳と言うと、どんなだったかなと考えると、部活ばかりして、高校受験の勉強を始めた頃で、やんちゃな学校でしれっと静かに過ごしてたなあ、と思います。夏休みでもないのに部活も勉強もしないで11日間も学校の友達と農園で過ごすとしたらきっと「何だそれ」と思ったろうなあ。。

彼らの滞在は、昼間は私たちと一緒に働き、夕食後は暖炉を囲んで子どもたちだけでまた少しプログラムがある、というものでした。

 

それぞれの11日間

私が農作業担当だった日に、初めて彼らと一緒に働くことになりました。34人が7、8人に分かれ、それぞれの班にシュタイナー学校の先生やEmbercombeのEducation Teamのスタッフがつきます。

最初に輪になって、EmbercobeでのGardening Teamの働き方などのレクチャーと、それぞれの自己紹介、今の気持ちを話すチェックインをしました。「楽しみにしています!」という子もいれば、「一体どういう日々になるんだか…」だとか「正直土いじりなんてしたくないの。手も服も汚れるし」という都会っ子発言も。大人たちは皆ニコニコ聞いていました。

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収穫作業をしていたかと思ったら、雑草で遊んでいたり、仕事せんかい!と思うようなこともありましたが、他の大人たちはあまり気にせずみんな働いていました。あまり英語のできないイタリア人の男の子をからかう悪い子もいたり。キッチン担当の時には味見しまくり、必ず音楽をかけ、みんなで歌っていました。

先週日曜にはEmbercombeのお祭りのような、Open DAYというものがありましたが、皆楽しそうに働いていました。私はそのときカフェ担当だったのですが、同じ時間に3人の子どもたちと働くことになりましたが、Aくんには学習障害、Bちゃんには不安障害のようなものがあると聞かされました。同時に多数の物事が進行したり、計算することが苦手なようです。初めはあまり気づかなかったのですが、

 

Aくん「£10−£4は、、£5かな…?」

私「いや、£6じゃないかなあ、、」

 

と、いうようなこともありましたが、笑顔で本当によく働いていました。シフトの時間が終わっても手伝いたい!と言ってくれたため、いてもらいました。サポートでついていた先生と話していたところ、「初めは二人とも、自分にはカフェなんてできないと言っていたけれど、今日の経験は彼らに自信を与えたと思う」と言っていました。

1週目はいろいろな仕事を持ち回りで経験し、2週目は自分の好きな仕事を選ぶのですが、あの2人はキッチンの担当になっていました。

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子どもたちに学校の話を聞いてみると「楽しいよ!」という子が多く、とても個性豊かに見えました。研究対象を自分で選び、発表するという課題が与えられた際に、自分でビジネスをした!と得意気に語るカシコソウな少年もいたり。

日に日にクラスの結束が高まっているなーと思ったり、ボランティアでする昼食後の皿洗いにも何人も手をあげる生徒たち。

最終日、これまでの体験を発表する会があり、私も参加してきました。「サバイバルスキルを学ぶのかと思っていたけど、もっとメンタルなものだった。思ったほど悪くなかった」という声が多くありました。

椅子に座って話す子もいれば、地べたに座る子も、立って話す子も、Bちゃんはみんなの前には出られないからということで、見学席に座ったまま話していました。詩を書く子もいれば、仲間を呼んで踊る子も。

夜にEmbercombeのスタッフからバンジョーを教えてもらい、練習していた子は、みんなの前で歌いながら演奏していました。つっかえつつ、決して上手とは言えなかったのですが、いつもうるさいみんなもしんとして聴き入り、歌い終えた後には大きな拍手。嬉しそうな彼の笑顔に胸が熱くなりました。

みんな思い思いではありましたが、何かを感じた子も少なくなかったのではないでしょうか。金曜日、そんな彼らは早朝にもかかわらず、モップがけまでしてゲルを去って行きました。

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ある日コリアンダーの芽を植えながら、シュタイナー学校の先生と話したときのこと。

私「シュタイナー学校の生徒はとても生き生きとしていますね。卒業後一体どんなことをしている子が多いんですか?」

先生「配管工から学者まで、いろいろだよ。ただ大切なのは、みんな自分のしていることが大好きだということさ。私もシュタイナー学校に通っていたし、シュタイナー教育にとても感謝している。そしてこの仕事がとても大好きなんだ。」

愚問だったなあ、と思いつつ、私は一体どうなんだろうと考えたり。大事なことを教えてもらった11日間でした。

 

 

寒空の下で全裸スイミング

タイトルの通り。

こちらに来て2週間ほどして、少しこちらでの文化やヨーロピアンらとのどっぷり共同生活にストレスも感じていて、あれやこれやとオットに文句を垂れていたときのこと。

 

私「こっちの人、気温10度くらいでEmbercombeの中にある湖(泥池)で泳いでるの、しかも全裸、どう思う!?ちょっとありえんよね。」

そうだね、ありえないありえない、人種が違うからだよ、という日本生まれ日本育ちの夫の言葉を期待していた私…

 

夫「うーん、でも、自然の中でいるっていうのはそういうもんなんじゃないかな。1回やってみたらみんなの気持ちもわかるかもよ」

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え?

 

オット!優しく慰めてくれるんじゃないのか、そこ!

 

うーん、でももしかしたらそういうもんなんじゃないかなあと思うしなあ。。夫にそう言われた手前、やらないのは愚かなことなのかもしれないし、こういう時間をもらっている分、いろいろチャレンジしてみないのはバカなのかもなあ。ていうかでも絶対寒いし。

ということで、くすぶりが続いていました。

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でも、

昨日は早朝に目覚め、超気分がよかったので、、湖まで走り、、服を脱ぎ、、

やっぱり空気は冷たく、水に入るまでにオット!なぜ止めなかった!なぜ止めなかった!!と激しく思いましたが、ジャッバーンと頑張ってきました。

 

年中毎日湖で泳ぐという達人女性のアドバイスにより、初心者は短時間(30秒くらい)で上がるのがよい、と言われたため、30秒×3回をこの日はやってみました。寒い…でも水から上がったらそこまで悪くない、目が覚める、そして達成感、ということで、思ったほど悪くはなかったです。全裸なのは温泉みたいなもんかなというくらいです。逆に水着着るとかえって寒いらしいし。

 

ありがとう、オット。なかなかやるではないか。

Embercombeでの1日の流れ

Embercombeでの1日の流れは結構ちゃんと決まっていて、基本的には月〜金は1日7.5時間働いて、土日はお休み。

 

8:00  朝ごはん

8:30  朝の会

9:30  仕事開始

13:00   ランチ

14:00   昼の会

17:00   仕事終了

18:30   晩御飯

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朝ごはん当番の日は朝7時〜、夕食の後のKP(Kind Person)シフトの時には19時以降キッチンの後片付けもあります。

ただ、朝ごはん当番になった場合は15:30には終わるし、キッチン担当の週は労働時間が長くなるので休みを入れたりして7.5時間になるように調整されています。

これだけ見ると単調な田舎・農園住まいに見えますが、朝の会ではSilence(沈黙)、その日の気分をみんながそれぞれ話す、ペアで別れて1対1で話すというものに1時間くらい使っています。さらに就業時間中も午前と午後に休憩を取るように言われているので、実労働5.5時間くらいです。そしてそれでも途中でぺちゃくちゃしゃべってるので、日本人の私としてはムズムズするところもあったのですが、、結局一緒に座ってしゃべってました。

時間外では日替わりで定期的や気まぐれに朝にヨガやダンス、終業後に自由参加のクワイヤーやディスカッションの会があります。これらは単にEmbercombeで働いているスタッフやボランティアが企画したもので、誰かがやりなさいとか、プログラムされている、というものでもないです。

あまり日本や日本人であることに対してため息をつきたいわけではないのですが、「何かをやりたい!」ということに対して、この人たちはなんて自由で積極的なのだろう、と感じるばかりです。’Can I~?’は言えたとしても、’Do you want me to~xxx?'というのが私には結構大変なのです。そんな上から目線な感覚はないと思うのですが、「あなた、私にこれしてほしいわけ?」と自分のやりたいことを聞く感覚が、自分にはどうしても怖いことだなと思います。そういうところ、もうちょっとどうにかなればなと思うのですが、長年染み付いたものなので、時間がかかりそうです。