生米プロジェクト

会社退職→結婚→夫は日本に置いてイギリスでゲル生活→現在プラハ

デンマーク教育にみる、全体包含手法

小難しいタイトルになりましたが、最初「共存」としてみたのですが、書いているうちに、これはどちらかというと「包含」だなと思いました。貧富、性別、身体能力、出自、職業。あらゆる人々が様々な観点でマイノリティや弱者となる可能性がありますが、これに対するこの国の取り組みも、また面白いところです。

職業的ヒエラルキーをなくせ

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私が今の学校に着いてすぐ、ここには何人先生がいますか?という質問をしたときのこと。その答えは、「先生?教科を教えるという意味なら、13人くらいだけど、私たちは教師だけでなく、キッチン・掃除・補修といったあらゆるスタッフ40人全員で生徒の教育に当たっている。キッチンスタッフが料理の授業を担当したり、生徒は1年のうち1週間授業を休んでキッチンの仕事をすることになっていて、その間はキッチンスタッフの指示を仰ぐ。清掃スタッフが寮の生活指導にあたることもある。みんなで生徒に関わるチームだから」でした。とはいえ、どうしても清掃・キッチン業務はヒエラルキーの下にあるという生徒の目もあるのは事実ですが、ヨーロッパ的なアカデミック>職人という序列を可能な限り無くしたいという姿勢が伝わってきます。

 

皆が同じ空間で勉強するには

先日小2クラスを見学したときのこと。私は窓際に座らせてもらい、授業を見学させてもらっていました。机はコの字型配置でしたが、ふと後ろを見ると、謎の席!少年が出窓にハマっている!!!

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よくよく教室を見渡すと、窓際の少年を含む4人の席はポツリポツリと離れていました。(先生の真ん前、教育の端、ついたての向こう...)

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この子たちは、診断こそないものの、学校生活上サポートが必要、とされると思われる子たちだそうで、親への相談の上このような席にいます。集中できない、他の子に高圧的な態度をとる、といったような子たちです。とはいえずっとここに固定というわけではなく、まだ小さいので、適宜席は変更し、生徒にとっての最適環境を見つけるそうです。

 

 

あらゆる生徒の受け入れは、システムにより成立する

ところで、どの学校を訪れても感じるのは、大小問題はありつつも皆落ち着いて平和だということです。Efterskoleのような私立学校ではドラッグ、いじめ等は退学対象になるそうですが、例えばアメリカの学校で聞くような、問題を起こしたら即退学!という風でもないようです。

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私が訪問した地元の0~9年生学校のすぐ隣には、養護学校が附設されていました。しかし、学校側はできる限りあらゆる生徒に家の近くの地元の公立学校に通ってもらうよう努力するそうです。素晴らしい取り組みですが、これはデンマーク人の気質や文化が優れているとか、実は単にそう美しい話だけでもありません。

通常デンマークの義務教育では皆家の近くの公立学校に進学しますが、その場合政府から学校に対し年間60,000DKK/人(100万円)の予算が与えられます。しかし、そこから学校の都合で生徒を他の学校に転学させる場合、転出先の学校に300,000DKK/人(500万円)を支払わなければなりません。これは普通学校のすぐ隣に附設されている養護学校に行かせる場合も同様で、この場合学校としては、1人の転出で生徒5人分の予算を失うことになります。Efterskoleなどを除き公教育がメインのデンマークでは、裕福だったり教育熱心な家庭の生徒もいるため、単に問題のある生徒を放置するわけにもいかず、なるべく良い形で全生徒に通ってもらえるように知恵を絞らなくてはならないのです。

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難民を社会に受け入れる工夫

また、ヨーロッパと言えば難民問題も取り上げられていますが、こちらでは難民認定されると、特に地方に居住区指定されますが、子どもたちの教育については、その地域の中でも近隣の指定教育機関に集められます。そこでは難民だけのクラスがあり、まずその中でデンマーク語を会得させ、遊びから始まり徐々にデンマーク人との生活に馴染ませるとのことです。各言語で授業をしてあげるのか?と聞くとそうではなく、子どもはそのうち覚えるから、とのこと。難民同士のつながりを持たせ、小さな環境で地元住民と関わり、社会に溶け込んでもらうのです。

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生き物は異物に対して不寛容なもの

とはいえ、デンマーク国民党(Dansk Folkeparti)という超排他的主張を持つ政治団体も一定の支持を得るデンマークデンマーク国民党 - Wikipedia

私が聞いたところでは、「あなたはデンマークを愛していますか?イエス?それならあなたも支持者です」といったわかりやすいフレーズで若者の指示も獲得しようとし、お年寄りには、移民は社会福祉を脅かす存在として必要以上に恐怖を煽っているだけなのよ、とのことでした。

www.humanityinaction.org

こうした政治政党の存在は、高福祉国家的な社会的取り組みと表裏一体なのかもしれません。

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