生米プロジェクト

会社退職→結婚→夫は日本に置いてヨーロッパに8ヶ月→夫と東京生活→2人でイギリスに引越し

Embercombeで考える、ビジネスとコミュニティとポリシーと

これまでもいくつか書きましたが、Embercombeには様々な個人・団体が訪れ、そう言った人々との交流がここにいる魅力でもあります。先週はサステナビリティ系の民間企業が会社の研修のようなものでEmbercombeを利用していました。ヨーロッパ・アメリカ・南米と各地に散らばるオフィスのメンバーが集まるイベントで、メンバーの親睦を深め、企業方針を浸透させる目的だそうです。私はたまたまこの企業(A社とします。)のホストという役割をすることになり、彼らの滞在をサポートすることになっていました。

世の中によりよく持続可能な変革をもたらすため、様々な業界の大小様々な企業に対しクリエイティブなコンサルタントをしている会社ということで、何となく面白そうな会社だなと楽しみにしていました。私も前職時代に何度かA社のような社内グローバルミーティングに参加したことがありますが、毎度いろいろな議論あり、発見があり、そしてただただ夜が更けるまで飲み踊る…というものでした。一般企業でこうなので、A社がEmbercombeとコラボしたらどうなるのかとワクワクしていました。

 

ところが蓋を開けてみれば、A社ほどがっかりした気分になったことはないくらい、残念な印象を多くのEmbercombeの人に残すものとなってしまったのです。

 

物議を醸すこととなったA社の滞在

A社の3泊4日の滞在の最終日、土曜日の朝。タクシーを見送った私はなんとも寂しい気持ちに包まれていました。きっと彼らはEmbercombe滞在を楽しみ、モチベーションに溢れ、世の中にプラスの影響を与えるような(少なくともそういう自意識でいる)人々なはず。しかしなぜこんなにも今私は後味の悪い思いでいるのだろうと、眠気の残る頭で考え始めました。

Embercombeの1日は、朝から始まり13時に昼食、キッチン担当でなければ17時には業務が終わり、18時半に夕食となっています。その後清掃担当がキッチンの掃除をして、遅くとも皆21時には仕事が終わります。ところが初日はA社の19時過ぎの到着に対し、窯焼きのピザを提供することになり、一人一人の注文を取っていると、すべて終わってみれば23時となっていました。

その後も13時の昼食の時間になってもミーティングが長引いて30分ほどの遅刻があったり、夜もマッチで暖炉に火をつけられないと言って終業後のボランティアらに不遜な態度で助けを求め、ブン取られるようにライターを貸してみたら返ってこない。夜中は飲み会となり、ゲルの周りで遅くまで騒いでいる…

最終日こそEmbercombeのスタッフもA社の人とケーリー(スコットランドの民俗ダンス)に招待され、その後もクラブ状態で踊っていましたが、最後まで「一緒に楽しむ」というものではありませんでした。タクシーにもさっさと乗り込み、同僚にのみ別れを告げていました。そして残ったのは至るところゴミの山。食べられることなく捨てられてしまった、肉を始めとする食べ物の数々でした。

 

この不快感は何なのか

今回A社の滞在は企業研修の一環ということで、ほとんどEmbercombeとの接点なく去ってしまった彼ら。この場所の意味や意義も、Embercombeが自然や動物をどう考えているかも知ることなく。

そういう彼らにとってEmbercombeは自然に囲まれた、ちょっとキレイでイケてる場所でしかなく、私たちのようなスタッフも、ここを形作るものではなくホテル会場などの従業員と映ったことでしょう。しかし考えてみればこれは多分全く普通の反応で、私もホテルで会議をしたりお店で飲食している時は、同僚以外はあまり頭になかったと思うし、ホテルや飲食店の従業員と同僚と混じってダンスなんてしない、普通。「17時で仕事終わりだから話してくれるなよ」なんてオーラを出されたら、サービス悪いな、と思うと思います。ゲル、電気もないし。

なぜ私は悲しい気持ちになっているのか。A社の人間は、けしからん集団なのか。しばらく考えていると、Embercombeという特殊な環境にいて、特殊な状況が当たり前となっていた自分に気づきました。

 

持続可能なコミュニティとして、Embercombeはどこへ向かうのか

A社の滞在について思うところあったのは私だけではなかったようで、彼らが去ってからミーティングが開かれ、私も参加しました。そこで今後はEmbercombeを選んだ人々にも最大限その価値を還元し、今後の気づきを得てもらうためにも、ただの場所貸しではなく我々のメッセージを伝える時間をいかなる団体とも持つようにしよう、となりました。(あとは、民間企業にお金を払って来てもらうなら、9/17時の就業感覚ではきっと甘いので、夜間シフト担当をつけたり、事前準備ももっと必要、とも。。)なぜゲルなのかなぜ電気がないのか、そういう話をしないならここでなくてもいいはずです。 

Embercombeは、あまりお金に余裕がある団体とは言えません。財政的にももっとサステナブルにするため、今変革の時にあるところです。今後はA社のような民間企業の滞在をより多く受け入れていきたいと考えているようです。しかしEmbercombeがEmbercombeとしての意義を全うし、かつコミュニティと共存しながらビジネスを回していくには、もっともっと考えていかなければならないところがあります。そこにポリシーがなければ、Embercombeがそのミッションを成し遂げられることができなくなります。

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Embercombeでの私の業務内容は、決して華やかなものではなく、掃除や修理、汚れ仕事のようなものが多くあります。しかしそれに対して私が喜びや満足感を感じていたのは、私がそこから得ていた一緒にいる人々からのポジティブな反応や幸せな時間の流れによるものだったのだと、改めて気づきました。この場所の価値をまた一つ感じるとともに、自分の周囲の労働に従事している人をどのような気分にさせるかも、また私の振る舞い次第なのだということにも、身につまされるような思いです。

 

 “Embercombe’s mission is to be a powerful and innovative catalyst for the emergence of leaders and change agents who will take courageous action for a just, peaceful and sustainable world.”

embercombe.org